生物学研究者の言いたい放題ブログ

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海外学振に関する私の経験とイメージ

少し前(多分海外学振の締切前くらい)から、海外学振に関する話題を色々なところで見る。実は私は海外学振経験者であるが、どうも昔のイメージが違って評判が良くないようだ。私は海外学振にはすごく助けられたというか海外学振が無かったら今の自分は無かったであろう。さらには最近の海外学振は私の頃よりもはるかに融通が利くようになっているみたいだ。ということで私が持っていた海外学振のイメージを適当に書いてみる。

まずは申請について。「学生が申請するには厳しいスケジュール」とあったが、確かにその通り。なぜ海外学振だけ少し締切が早いのだろうか?ただ採択される人の業績を考えると、とっくに修了が確定しているレベルでないと厳しいかも。ギリギリで大きな論文が通った人は焦らずともチャンスは十分ある。私を含め私の周りでは日本国内でポスドクをやってから海外学振を取るケースしか知らない。

採択の難易度について。私達の分野では細目に0-1人/年なので採択自体は非常に厳しかった。これは他分野を見ても同じような感じだ。つまり申請した年に自分よりも業績が上の人がいた場合とても厳しい戦いになる。"採択率は高い"という記述のあるブログも見られるが、私の経験からするとそもそもそれなりの業績のある人で無いと海外学振に申請すらしなかった。逆に言えば手薄なところであれば比較的チャンスが高いのかもしれない。実際に手薄であろう領域で取った知り合いは海外学振は簡単に取れると豪語していた。

金額について。これは国によるとしか言いようがない。先進国であれば大体Maxに近い額だと思うのだが、先進国であっても例えばスイスに海外学振で行ったら大変なことになるだろうとは想像できる。このあたりはそもそも海外学振で物価が高い国に行こうとしないのが正解かもしれない。学振としてはこれ以上額は上げられないので、他からの収入を年間100万とは言わず(これでも私の時よりは柔軟になっているのだが)、場所によってある程度柔軟な対応も必要かもしれない。あとは飛行機代がでるのも嬉しい。

年数。私は倹約家なので、合計額は同じでいいので3年やりたかったというのが本音だ。2年は短い。しかも私の場合は非英語圏だったので、生活の軌道に乗るまでがとにかく大変だった。非英語圏に関しては、滞在費なしでいいので3ヶ月前の渡航を認めるなど柔軟な対応をしてもらえれば、基礎的な語学に集中でき、結果としてもう少し最初の半年くらい集中して研究ができたのではないかと思った。

採択後、現地では「自分でフェローシップを取ってやってきたやつ」というそれなりの評価をされる。雇われポスドクよりはベースとしての評価が高い。向こうのボスからすれば懐が全く痛まないポスドク

私のケース。海外学振の受け入れ先の教授とは、分野どころか研究対象が一部被っていたのでお互い名前だけは論文で知っていた。最初は特にそこのラボに行きたいわけではなかったが、国際学会のときに偶然話し、研究者として見習うべき点が多かったので海外学振の受け入れ先の候補の一つとして考えた。受け入れ先への連絡は「海外学振でそっちでポスドクやりたい」ということを事前に連絡。特にスカイプなどで綿密な打ち合わせは無く、数回のメールのやりとりで意見が合致。とてもWelcomeだったようで、すぐに受け入れOKの手紙も書いてくれた。

得られたもの。とにかくそこのボスとの出会いは貴重だった。研究のスタイルや考え方、指導法まで見習うべき点は多く、PIになるための素養を育ててくれたのは間違いなくそこのボス。また、今も共同研究から日常会話まで色々とメールをしたりしてきたりと、とても良い関係を築いている。未だに海の向こうから色々とサポートしてくれたり(逆にすることも多々あるが)、そこから広がる人脈も非常に助かる。

ということで海外学振は私にとっては良いことしかなかった。あくまでもたくさんいるうちの1人の意見ではあるが、参考になれば幸いである。

以上。