査読で不正を見破ったときの話2
前書きは省略。前回の記事を参考にして欲しい。
2つめ、3つめのケースはコピペ。つまり剽窃だ。
2つめのケースでは少なくとも1段落丸ごとコピペされていた。不正を感づかせたポイントはただ1つ、単語間にスペースがなかったり、不自然な改行があったり。もはや人に見せる体のものとは思えなかった。
「いったいこの著者に何があったのか?」
「間違ったファイル形式のものでもアップしたのか?」
「読みにくいから文章くらいしっかり書かせろってエディターに連絡しようかな...」
などと考えている時にピンときた。
「これはPDFからコピペした時にたまになるやつや」
適当な文章をGoogleに放り込んだら見事にヒット。元ネタのURLをエディターに連絡して終了。所要時間は10分程度。時間は短いけどこんなことに使いたくないよ。多分、その段落以降もコピペだと思うがチェックしていない。
3つめのケースは自分の論文からコピペされていた話。上記のケースのように段落丸ごとではなくたった2つの文なのだが間違いなかった。
そもそもその論文はかなりクオリティの低い論文だった。データの面でも文章という面でも。かなり早いうちからrejectにしようとしていたが、ある理由もあって真面目にコメントを書いていた。
そして最後の段落つまり結論に差し掛かった時に驚きの文章が。なんと彼らの研究では全く触れられていない生物種の名前が結論となる文章に入っていたのである。
「あれ?この論文ではその生物種は扱ってないんじゃない?その生物種の仕事は自分がやったけど...っていうかこの文章に覚えがあるけど、もしかして自分の論文の丸パクリ?」
実はこの論文、クオリティが低いながらも私は真面目にコメントを書き出していた。普段なら短い全体的なコメントのみ書いてrejectするレベルである。しかしこの論文は私の論文が機となって行った研究だった(とイントロに書いてあった)。
研究者として自分の研究を発展させてくれるのは嬉しい。その思いから、せめて著者らに少しでもためになるようにとコメントを書いていた。しかし最後にコピペ。杜撰なコピぺ。それまでのこちらの気持ちを裏切られたかのような苦い苦い査読だった。所要時間は多分2時間くらい。今思い出してもバカらしい。
これらのケースに関して、著者らは査読を突破できるとでも思っていたのだろうか?ケース1も含めて、これらの不正行為は杜撰であったために発見することができた。逆に言えばもう少し手間をかければ少なくとも私は見破ることのできなかっただろう。
なぜそのような杜撰なわかりやすい不正行為をはたらいたのか?不正行為そのものが起こることは理解できても、このような行為は理解不能である。きっとそんなレベルのものでも査読を突破した成功体験があるのだろうが...
以上。